ストレッチで柔軟性を上げて、より良いサーフィンを

人体は、関節をまたぐ形で筋肉がついており、筋肉の端部には腱や靭帯がついている構造になっている。柔軟性(flexibility)が高いとは、筋肉や腱が伸びる能力が高いということであり、これによって広い関節可動域や衝撃に対するクッション性が増す。

スポーツにおいて柔軟性はパフォーマンスを上げるために非常に重要な要素だ。もちろん、サーフィンにおいても柔軟性は大切で、「筋力よりも柔軟性のほうが大切」というプロサーファーもいるほどだ。

優れたサーファーの動きをスローで見てみると、派手なアクションほど各筋肉の可動域が阻害されることなく、うまく連動していることがわかるだろう。必要な筋肉や腱が固いままだと、流れるような動きができず、また故障につながる恐れもある。

柔軟性が無くなる理由

筋肉や関節は、長期間動かさなければ固くなる。筋肉は委縮し、関節はほとんど動かなくなってしまう。

では、なぜ動かさないと筋肉や関節は固くなるのか?答えは「血流」である。筋肉や関節を動かすと、その部分の血流が良くなる。血流が良くなると、血液によって運ばれる酸素や栄養がいきわたりやすくなる。

反対に、血流が悪くなると、栄養が運ばれず疲労物質も溜まりやすくなり、筋肉は固くこわばっていく。こうなると、筋肉や関節を動かそうとしたときに痛みがでてくるので、脳が自然と可動域を制限しようとしてしまい、ますます体は固くなっていく。固くこわばった状態の筋肉や腱・靭帯が強い力で引っ張られると、切れてしまう。

また、筋肉が固くなったり弱くなったりすると、その部分から姿勢が悪くなったりもしてしまう。例えば、大腰筋や大腿直筋、大胸筋が固くなると、猫背になりやすい。

ちなみに、体が固い人は血管も固い傾向があるといわれている。血管が固いと、血圧が上がりやすかったり、動脈硬化のリスクも出てくる。過去の研究で、成人526人を対象に血管の硬さと体の柔らかさを調べたところ、若年者では相関関係は見られなかったが、中年以降では体が硬いほど血管も硬いという結果が得られている。

どうやって柔軟性を上げるのか?

多くの人は既に答えを知っていると思うが、正解は「ストレッチ」である。ただ、答えを知っていても効果が出ないまま止めてしまう人も多いだろう。そこで、しっかりと効果を出すための条件を紹介したい。

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少なくとも、3ヶ月は毎日続ける

筋肉は筋繊維が束になった構造になっている。筋肉が収縮する場合、筋繊維がユニットごとに収縮する構造になっている。その一つのユニットをサルコメア(筋節)と呼ぶ。柔軟性を上げるには、サルコメアの数を増やすことが必要である。

サルコメアの数を増やすには、高い頻度で筋肉を伸ばすことが必要だ。頻繁に筋肉を伸ばすと、脳が「サルコメアを増やして、筋肉の断裂を防ごう」というように反応する。とはいえ、強度や頻度が少なかったり、期間が短いと脳は反応しない。脳が反応するには少なくとも3ヶ月、毎日「痛気持ちいい」程度で筋肉を伸ばすことが必要だ。

1セットではなく2〜3セット

頻度が高いほうが、脳が反応しやすい。そのため、長い時間で1セットとするよりも、伸ばした状態で30秒キープを2〜3セットしたほうが効果的である。

サーフィン前には静的ストレッチよりも動的ストレッチ

ストレッチは、大きく分けて2種類ある。それは、「静的ストレッチ」と「動的ストレッチ」だ。

「静的ストレッチ」は、1方向に伸ばすストレッチのことで、同じ姿勢をキープして伸ばすことだ。柔軟性を上げるには、この静的ストレッチを行う。

一方で「動的ストレッチ」は、体をさまざまな方向に動かしながら伸ばすストレッチである。ラジオ体操をイメージすると、分かりやすいと思う。

静的ストレッチを競技前に実施すると、パフォーマンスが低下してしまうという研究結果が数多くある。WSLのトップサーファー達も、ウォームアップには動的ストレッチを取り入れている選手が多い。

逆にサーフィン後や陸トレ後のクールダウンには静的ストレッチが適切である。筋肉の使用によって筋線維は損傷し、周囲を覆っている筋膜は固まりやすくなっているため、ゆっくりと筋肉を伸ばしながら血流を促し、隅々まで酸素を行き渡らせることが有効というわけである。

ウォームアップに適した動的ストレッチについては、こちらの記事を参照されたい。

サーフィンのための柔軟性をアップする静的ストレッチ

では、ここからサーフィンに適した静的ストレッチを紹介したい。動画を見ながら楽しく伸ばせるので、長続きしない人にもお勧めだ。

超固い人向け。肩甲骨ストレッチ

筆者がやってみて、肩の痛みがよく取れると感じるストレッチである。たくさんパドリングして肩回りが疲れたあとも、回復が早い傾向がある。器具も不要でお手軽にできる点もおすすめだ。

腰痛改善ストレッチ

サーファーには反り腰姿勢の人が多い。また、サーフィン歴が長いサーファーは意外とお腹がポッコリ出ている人も多い。これは、パドリングによって腰が沿った状態が体に染みついていることが原因だ。腰痛の原因にもなるため、以下のストレッチで症状を緩和していきたい。

股関節ストレッチ

体が超固いサーファー向けの股関節ストレッチも紹介したい。膝を痛めやすいひとは股関節が固いと言われている。最近膝が痛いという人は、股関節から柔らかくしてみよう。

足首ストレッチ

サーフィンにおいて、ボードから最も力を受けやすいのが足首。足首が固いと、膝にも負担が来やすいため、膝を守るためにもしっかり伸ばしておきたい。

まとめ

サーフィンにおいてよく故障する箇所は、首、肩、背中、鼠径部(太もものつけ根の下腹部の部分)、そして膝である。

例えば、ジョン・ジョン・フローレンスは過去に何度か膝を負傷して手術もしている。ミックファニングも同じように膝を大怪我している(ジョンジョンもミックも、膝前十字靱帯の損傷だ)。サーフィンのパフォーマンスを上げたり、生涯できるだけ長くサーフィンを楽しむために、高い柔軟性を獲得しておくことは、全てのサーファーにとってメリットしかない。

ストレッチに関しては、まさに「継続は力なり」。効果を急ぎすぎないことも一つのコツで、気楽にリラックスしながらやっていこう。