トッププロのパドリング(テイクオフ編)
海に入っていて、上手いサーファーがテイクオフするのを見て「なんで、こんなに早いんだ??」と思ったことはないだろうか。ほぼ同じようなポジションで波待ちしていて、上手いサーファーのほうがボードの浮力は少ないくらいなのに、彼らはどんどん波に乗っていく・・・。一体何が違うのか。その答えのひとつは、パドリングにあるかもしれない。
トッププロのパドリング
トッププロのテイクオフを、スローモーションでじっくり見ることができるおすすめ動画が以下である。2018年にケリースレーターのウェイブプールで開催されたWSLフォウンダーズカップで撮影されたものだ。見どころは沢山あるが、今回はテイクオフ時のパドリングに絞って見てみたい。
パドル後半の手首の返し
パドリングをかききって、手首が水面から出てくるタイミングに着目してみると、いずれのサーファーも手首が内側(体側)に向いている。このストロークの軌道が最も推進力が得られやすいようだ。
ジョディ・スミス

ケリー・スレーター

ガブリエル・メディーナ

どれだけ深い場所を掻くか
パドルのストロークの最中は、かなり深い位置まで肘を沈めている。サーフボードのレール付近に肘が来るようなイメージだ。
ジョディ・スミス

ケリー・スレーター

ジョン・ジョン・フローレンス

戻るときの手の軌道
水をかききった後に、手を前に戻すときの軌道だが、2パターンある。各サーファーのクセによるところが大きいように感じられる。
1:ゆっくり深くパドリング型(ガブリエル・メディーナ)
肘をそれほど曲げないまま、体と手のひらが平行になるように手を前に戻している。水中の肘の曲げ具合と、前にもどすときの肘の曲げ具合はほとんど変わっていない。一見リラックスしてパドリングしているように見えるが、十分な推進力があり余裕をもってテイクオフしている。
2:力いれてガツガツパドリング型(コロヘ・アンディーノ)
かききった後の手のひらの位置から、次に水中に手を入れる位置までの軌道が最短になるように、肘を曲げて手のひらを前に出している。
3:1と2の複合型(ケリー・スレーター)
はじめのうちは上記1のゆっくり深く型だが、テイクオフタイミングが近づくにつれて、2のガツガツパドリング型に移行している。
動画を見る限り、2よりも1のほうが深くストロークしやすいため一かきあたりの推進力は得られやすい。一方で、パドル回数は1よりも2のほうが稼ぎやすい。最短距離で手を前に出すことができるからだ。
1のみでも十分推進力がある場合はそのままスタンディングできるが、グリングリンに掘れている波でレイト気味にテイクオフする時などは短時間に多くパドルしなければならない。せっせと漕がないと波に置いていかれるか、真っ逆さまにパーリングすることになるだろう。手を前に出すときの軌道はなるべく短く、深く強く漕ぐのがベストである。
水泳のクロールのように、親指から入水?
クロールでは親指から入水させることが重要だと教えられるが、サーフィンのパドルは異なる。いずれの選手も、手の先端(中指)から手のひらを入れている。写真はミシェル・ボウレズ。
板の角度も重要
いずれのトッププロも、テールが持ち上げられたりノーズが沈みすぎたりしないよう、パドルの最中も上体の位置を調整して板の角度を調整している。どのサーファーも立ち上がるまで、ノーズの角度がほとんど変わらないことがお分かりになるだろう。これによって、波の押す力を板が最大限に受けることができる。
ところで、バタ足は必要?
テイクオフ時にバタ足をしている選手とそうでない選手がいる。
ジョエル・パーキンソン
かなり大きくバタ足をしている。
マット・ウィルキンソン
こちらも、かなり目立ってバタ足をしている。
ジョディ・スミス
バタ足をしそうでしていない。
テイクオフのタイミングを調整するために、必要に応じてバタ足をしているようだ。バタ足をせずともテイクオフはできるが、バタ足で推進力をつけることによってテイクオフのタイミングを早めているように見受けられる。とはいえ、バタ足をすると板がブレて波の力を逃がしやすくなるので、一般サーファーがバタ足を取り入れる際は注意が必要だ。
まとめ
テイクオフのときは、ただ波に乗ることに頭がいっぱいになってしまい、自分が今どんなパドルをしているか、板がしっかり波の力を受けているか考える余裕はないものだ。とはいえ、パドリングはサッカーでいうところの走ることと同じくらい重要なこと。上記の内容を普段から意識しておくことで少しでもテイクオフを早くできるかもしれない。
板の角度が一定になるよう気を付けながら、中指から手を水にいれ、なるべく深く漕いで自分の体側に掻き切る。波に置いて行かれがちな人や、テイクオフからのファーストターンに余裕が無い人は、一度参考にしていただけると幸いである。
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