良い波映像紹介シリーズ~ビッグウェーブ編
日本に住んでいると、台風や大きな低気圧が近づいたときしか会えないビッグウェーブ。アウターリーフで炸裂する大波に乗った時のアドレナリンはすさまじく、それに魅せられたサーファーも筆者の周りに何人かいる。
しかし世界は広い。海外にはさらに凄まじい波が存在する。私個人はチャレンジすらしたくないが、そのいくつかをご紹介したいと思う。なお、良い波かどうかは皆様のご判断に委ねたい。
マーベリックス(Mavericks)
カリフォルニア州サンフランシスコから車で一時間ほど南に移動した場所に、ハーフムーンベイという湾がある。そこの岸から約400メートルほど沖でブレイクするサーフスポットが、マーベリックスである。
Jeff Clarkというサーファーが開拓したサーフスポットで、その名は彼の愛犬にちなんでつけられた。本領を発揮すると、トレーニングを積んだトップレベルのサーファーでも死の危険性を感じるほどパワーのあるブレイクとなる。マーベリックスを経験したことのあるサーファー曰く、ワイプアウトすると凄まじい力で巻き上げられて叩きつけられ、20フィート以上海中に引きずり込まれるそうだ。
水温は冷たく、サメも多く生息する海域であり、色んな意味で命がけのサーフィンになると思われる。
ジョーズ(Jaws)
次は、ハワイはマウイ島のビッグウェーブポイント、ジョーズをご紹介したい。1970年代にマウイのローカルサーファー、John Robertson達によって初めてサーフィンされたスポットで、スピルバーグの映画にちなんでジョーズという名が付けられた。
その後、90年代初頭にトゥーインサーフィンが登場したことによって、ジョーズもトゥーインサーフスポットとして広く知られることとなった。トゥーインサーフィンとは、この動画のように水上オートバイに引っ張ってもらってテイクオフするもので、人力のパドルでは到底テイクオフできないほどの大波でもサーフィン可能となる。
だが、ハワイの友人曰く、トゥーインサーフスポットであるジョーズに人力でテイクオフするのが数年前からトレンドになっているとのこと。このサイズの波に喜々としてパドルアウトするあたりは、流石ハワイアンだと思う。
キラーズ(Killers)
キラーズは、バハ・カリフォルニアのエンセナーダから10km西の沖合の島、イスラ・トドス・サントスのノースアイランド沖に位置するポイントである。1960年代に発見されたブレイクで、冬から初春にかけての強い北西うねりがヒットすると50フィートものフェイスが出現する。
キラーズも他のビッグウェーブスポットと同様、ある程度のサイズに達しないと本領を発揮しないが、15フィートから35フィートほどのサイズに達するとピークは掘れ気味になり、テイクオフは非常にスリリングになる。走れる距離は比較的短く、マーベリックスより少しパワーは劣るが、予測が難しいカレントや大岩が存在し、インサイドでセットをくらうと非常に危険と言われている。
動画は若手のビックウェーバー、Nic Vaughanのライディングである。彼はサンディエゴ州立大学でビジネスファイナンスの学位を取得し、卒業後はモルガン・スタンレーでインベスターとしてキャリアを開始する予定だったが、ビッグウェーブに魅せられてプロサーファーとしてのキャリアを選択した異色のビックウェーバーである。
チョープー(Teahupoo)
WSL(旧WCT)の大会の開催場所としてもよく知られるタヒチのチョープー。80年代の中ごろに初めてサーフィンされたスポットで、死亡事故も発生している世界で指折りの危険な波といえる。
岸から500メートルほどの沖合にあるポイントのため、岸からもパドルアウトすることができるが、通常はボートでアクセスする。サイズが6フィート程度であれば比較的綺麗なブレイクを見せるが、8フィートを超えてくると、一気に危険度が増す。
この波にチャレンジするサーファーは、崖から飛び降りるような底掘れピークをテイクオフし、海の底まで飲み込むようなバレルの中を70mほど走り切らなければならない。5月から9月にかけては頻繁にブレイクするが、動画のようなサイズでサーフィンできるのは限られたタイミングになる。
最大サイズのチョープーのブレイクは、サーファーを飲み込むために大きな口をあけた生き物のようにも見える。
ダンジョン(Dungeons)
南アフリカはケープタウンのHout Bay近くのアウターリーフに、ダンジョンと呼ばれるブレイクがある。5月から10月あたりにかけて発生するストームによるうねりがヒットすると、観ているだけで冷や汗をかくほどのホローなライトブレイクを見せる。
また、世界で最もサメによる被害が多い海域の一部にあるため、一番危険なサーフスポットといっても過言ではない。南アフリカ版マーベリックスともいえるビックウェーブスポットだ。
ダンジョンという名は、ここで波乗りをしたローカルサーファーが25フィートのセットを連続でくらい、水中から抜けられなくなったことに由来する。このポイントがブレイクしはじめるサイズは10フィートからだが、18フィート以上にならないと本来の姿は見せない。
ワイメアベイ(Waimea Bay)
最後に紹介したいのは、聖地ノースショアのビッグウェーブポイント、ワイメアだ。20年ほど前になるが、筆者が初めて購入したサーフムービーに、ワイメアの波が映っていた。
山のようなサイズのブレイクに木の葉のようなエレファント・ガン(画像はここをクリック)で挑むビッグウェーバー達。岸に到達したスープですら大人を押し流す程のパワー。サーフィンを始めて数年程度だった私は、その凄さに衝撃を受けた。
ワイメアは、実在した伝説のサーファー、エディ・アイカウの功績を称えたビッグウェーブ・サーフィンの大会「The Quiksilver in Memory of Eddie Aikau」の開催場所としても知られる。この大会は、ハワイアンサイズ(日本で一般的なフェイスのサイズではなく、波を沖側から見た場合のサイズ)で20フィート以上ないと開催されない。世界トップレベルのビッグウェーバーが招待される権威ある大会で、実際に大会が開催されると、見物客によってノースショア全体が交通渋滞になるほどだ。
ワイプアウトの衝撃だけでウェットスーツが千切れるほどのパワーだが、ハワイの美しさと相まって、そのブレイクは神々しい雰囲気さえ感じさせる。
まとめ
いかがだっただろうか?今回ご紹介したブレイクに挑戦したいと思う強者は多くないと思うが、もしチャレンジするのであれば、適切なトレーニングと入念な準備、できる限り最高のスタッフや道具を揃えて行くことをお勧めする。
著者プロフィール
Written by Jan
九州在住。サーフィン歴23年。
世界のさまざまなポイントでサーフィンすることを夢見る週末サーファー。