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サーフボードの素材や構造について

サーフィンギア

サーフボードの素材・構造は新しいものがどんどん登場してきており、サーファーの好みや波質に応じて色々な素材が選べるようになっている。材質によって性能や値段が変わるので、サーフボード購入の際には考慮しておきたい項目である。この記事では、現在市場に出ているサーフボードの素材や構造の特徴を紹介していこうと思う。

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PU(ポリエスター、POLY/ポリとも呼ばれる)

PUは、シェイプしたウレタンフォームをポリエステル樹脂でコーティングしたもので、今でも一番ポピュラーな仕様である(ウレタンフォームの写真はこちらをクリック)。

そもそも、ウレタンフォームが登場する前のサーフボードは、木材で作られることが主流であった。外材として一般的に使用される木材(レッドウッド)を削ったものや、内部を空洞にした構造のもの、軽く加工しやすいバルサ材を使用したもの等に、グラスファイバーを巻くことで強度と耐水性を確保していた。

しかしながら、そもそも木材ということで重く加工がしづらい点、グラスファイバーの破損によって水を吸うとさらに重たくなるという難点があった。そこで、サーファーであったGordon “Grubby” Clark氏が、ウレタンを使ったサーフボードのフォームを開発し、1961年にクラークフォーム(Clark Foam)社を立ち上げた。

ボード構造の変遷については、こちらの写真が分かりやすい。

木材からウレタンフォームに変えることで重量が大幅に削減され、加工のしやすさから様々なデザインを取り入れることが可能となった。その後クラークフォーム社製のフォームは、アメリカのサーフボードブランクスのシェア80%〜90%を占めると言われるまでに普及したが、突如2005年12月にクラークフォーム社が閉鎖となった。

突然の閉鎖の背景としては、米国環境保護庁(EPA)の基準に沿わない事項(クラークフォーム社が製造したポリウレタンフォームに発ガン性物質が含まれているというもの)があり、EPAがクラークフォームを閉鎖させることを示唆しつつ指摘したことと言われている。

それを受けて、職人気質のClark氏は「役所の安全基準を順守していては、良いフォームは作れない」として、フォーム製造に使う道具、型、機械、全てを破壊したらしい。独占シェアをもつ製造メーカーのノウハウがすべて消えてしまったため、新たなフォーム製造が不可能になってしまったわけである。

クラークフォームの閉鎖によって、材料入手が困難となった当時のサーフボード製造業界はパニックとなり、それをきっかけにPU以外のサーフボード素材が続々と登場することとなった。

だが、様々な素材が選べる今となっても、PUの一層巻きが一番調子が良いというサーファーは多い。4オンスグラスファイバーを1層だけウレタンフォームに巻いてコーティングしたボードは、ちょっとしたきっかけですぐに折れたり破損したりしてしまうものの、その乗り味から多くのトッププロサーファーが選ぶ仕様である。

また、安価で製造に時間もかからないため、シェイパーが新しいデザインを試すテストボードとしてもよく使われる。

現在の代表的なウレタンフォーム供給元は、US BlanksArctic FormPacific Foam、King Mac Surfboard Blanks、Bennett–Dion Blankなどが挙げられる。

同じように見えるフォームも各社それぞれ特徴があり、発泡密度や白さ・ロッカーだけでなく、ストリンガー素材を他と異なるものにしているなど様々なタイプがある。PUの乗り味が好みの方は、ボードオーダーの際に、ブランクスについてもシェイパーと色々相談してみると良いだろう。

モールドボード

クラークフォームの閉鎖後、金型を使ってモールド成型されたサーフボードが多く出回った。

当時のモールドボードは廉価で頑丈ではあるものの、しなり(フレックス)がなく、その乗り味から「パッコンボード」と言われたり、製造工程に由来して「たい焼きボード」と揶揄されていた。そのころの多くのサーファーは、モールドボードはPUのカスタムボードよりも下位のボードとして捉えていたように思う。

だが、今となってはフレックスを十分に考慮した素材も多く、一口にモールドボードといっても、様々なタイプが登場している。

構造としては、EPS(Expanded Poly- Styrene:ポリスチレンを発砲させて硬化させたもの、要は発砲スチロール)を芯材として、エポキシ樹脂でモールドコーティングされている仕様が一般的である。また中国や東南アジアの工場で製造されることが多い。

SURFTECH(サーフテック)

数あるモールドボードのうち、代表的なのはサーフテック社製である。1989年に創業、その後「タフライト(Tuflite=頑丈で軽い)」という名前で多くのサーファーに知られることとなった。

当初の仕様はパッコンモールドボードであったが、その後改良が加えられ、フレックス性能を上げるためにフォームはEPSだがレールをPU素材とした構造にするなど、現在販売されている仕様は当時と別物になっている。また、アルメリック(チャネルアイランズ)サーフボードの新しいモデルもラインナップしていることも大きな魅力である。

以下の動画にて、ケリー・スレーターのそっくりさんNoel氏がアルメリックの同じモデルでPUとサーフテックを乗り比べた感想を説明されている(7:22あたりからサーフテックの説明)。

要約すると、

・硬く凹みにくい。重さは凄く軽いというわけではなく、PUと同じ程度。
・頑丈であるため、新しいマニューバーに挑戦したりする際に適している。(PUだと、比較的簡単にボードが凹んだり破損したりする)
・寸法のカスタムができず、決まったサイズのみの展開であるため、好みのサイズがない場合がある
・ねじれ方向のフレックスが少なく、ボードが硬く感じるため、波が小さいときは柔らかめのフィンを使うとよい。
・波のサイズが大きくなると、硬めのフィンを使うと良い感触である。

Aviso

完全中空構造で、フルカーボンが特徴のモールドボード。

とにかく強度があり壊れにくいと言われているが、筆者がリペア工場に行くと、破損したAvisoを見かけることが結構多く、(当たり前だが)絶対に壊れないというものではない。また、リペアも技術を要するケースが多いらしい。

中空構造のため、オーバーフロート(体重に対してボードの浮力が高すぎること)の場合、あえて内部に水を入れて適正浮力にするという裏技?もある。2014年4月をもって生産を終了。

その他のモールドモード

その他、比較的知名度のあるモールドボードとしては、Lost(Placebo:プレセボ)のFlexlite(フレックスライト)や、JUSTICEのFLEXFLY、NSPなどが挙げられる。

各社とも構造に若干の違いがあるが、いずれも特徴としてPUよりも頑丈で浮力があることが共通している。私もパッコンボードと呼ばれた時代にモールドボードを購入したことがあるが、今となって考えると、浮力が十分あるボードでレールを入れる練習をしたことが上達の助けになったと思う。

ハンドシェイプによるEPS+エポキシボード(※)

さて、ここからは、EPSフォームをエポキシ樹脂でラミネートする構造のうち、上記のようにモールド成型される仕様ではなく、人間の手でシェイプするタイプのものを挙げていく。

※ここでは、フォームをマシンで粗削りするマシンシェイプを取り入れている場合も総じてハンドシェイプと記載しています。

EPSフォーム自体がウレタンフォームに比べると非常に軽量であるため、PUよりも軽量に仕上げられることが一番のメリットである。また、ハンドシェイプの場合、好みのサイズを選んでオーダーすることが可能な点も大きい。

乗り味としては、サーファーそれぞれの好みにもよるが、概ね共通するのは「スピードが出しやすく小波に向いている」ということ。

一昔前はEPSでボードをオーダーするサーファーは少数派であったが、筆者の知人のシェイパーに聞いてみたところ、最近はオーダーの割合がPUが2に対してEPSが8とのこと。小波メインの日本のサーファーにとっては、まさに適した素材であるといえる。

ただし、エポキシ樹脂を使用していることから高温に弱く、60度以上でフォームとラミネートが剥離する場合があるため、保管には注意が必要だ。

最も一般的なEPSフォーム+エポキシ樹脂の仕様

見た目や製造の流れはPUとほぼ同様であり、様々なシェイパーが用いている一般的な仕様である。モールドボードと異なり、製造の際に特殊な機材は必要なく、EPSフォームをシェイパーがシェイプし、ガラスクロスを巻いて、エポキシ樹脂でラミネートした構造。

ウレタンフォームと同様、中央に木材のストリンガーがあるものがほとんどで、EPSフォームの供給元としてはUS blanks社やMarko社が大部分である。

また最近は、センターストリンガーが木材でなく、硬いEPSフォームとしたタイプの構造も多くみられるようになった。

Firewire(ファイヤワイヤー)

センターストリンガーが無く、レールにバルサ(木材)等を使うことで適切なフレックス性能を発揮させるボード構造か特徴。こちらもEPSフォームにエポキシ樹脂でラミネートしたものが大半であり、PUと比べたときの軽さや頑丈さ、および環境性能が優れているという特徴が挙げられる。

ケリー・スレーターやロブ・マチャドがプロデュースしたモデルや、ジョン・パイゼルやダニエル・トムソンといった旬のシェイパーが名を連ねていることも大きな魅力である。

乗り心地については、他のサイトに多く掲載されているため、ここでは割愛するが、筆者の知人から聞く声は比較的ポジティブなものが多い。Firewireが一躍有名になったのは、タジ・バロウがライダーになったことがきっかけだが、近年ではケリーが株式を取得し、自身が開発・プロデュースに携わるようになったことから、話題性が非常に高い。

Future Flex

Future Flexは、EPSフォームをエポキシ樹脂でラミネートしているという点では他のものと変わらないが、ストライプ状のカーボンがレール全体に入っている点が特徴的である。Firewireと同様センターストリンガーが無く、ボード中心のスタンス部を中心にしなる構造となっている。

一時期、筆者が好きなサーファーの一人、Craig Anderson(クレイグ・アンダーソン)が乗っていたため気になっていたが、最近この構造のボードは海であまり見かけない。

PUやEPS以外の素材や構造

XTR

発泡ポリスチレン(XPS:Extruded Polystyrene)フォームの一種。XPSは製造元によって呼び名や製造方法が若干異なり、XTRのほかにスタイロフォームやSuper b’sといったものがある。いずれも水を吸わないという点が大きな特徴で、ちょっとしたクラッシュを放っておいてもボードが重くならない。筆者はXTRのボードを5年ほど使っておりデッキはベコベコに凹み、新品で購入してから一度もリペアをしたことが無いが、重さは購入当時とほとんど変わらない。

ちなみに以下の動画は、グラッシングを施していないXTRのサーフボードで、サーフィン前後のボード重量を測るというもので、むき出しフォームでサーフィンした後も重量は変わらないという結果になっている。

また、軽さも特徴で、マニューバーの際に板を振り回しやすい。PUと比べると、浮き方に若干癖がある印象があるが、慣れれば問題ない。

デメリットとしては、EPSよりさらに熱に弱く、フォームとエポキシ樹脂の間に剥離が起こりやすいことが挙げられる。また、タバコの火を押し当てたような変色が熱によって起こる場合があるため、高温の車内に保管するなどは、極力避ける必要がある。

Varial(バリアルフォーム)

昨年あたりから、航空宇宙産業やF1カー産業で使われる新素材を使ったVarial Foam社製のフォームが注目されだした。

Varialの長所としては、耐久性が高く、フォーム自体は黄ばまないこと(フォームが紫外線にたいして耐性がある)。また、剥離もなく水も吸わないとされている。短所としては、オーダーできるブランドが限られており、金額も割高、製造に時間がかかることが挙げられる。

金額は他の素材と比べて割高ではあるものの、耐久性に優れ板が長持ちするため、結果コスパは良いといえよう。なお、ラミネートする樹脂はエポキシでもポリエステルでもどちらでも問題ない。

上記の動画にて、ケリー・スレーターのそっくりさんNoel氏が、カリフォルニアのTrestlesにて、GPSを使ってボード性能比較を実施しているので、PUとVarialを比較した結果を以下に紹介させていただく。

・波の最高速度→PUのほうが速かった
・波の平均速度→PUのほうが5%速かった
・カットバック回転速度→Varialのほうが8%速かった
・カットバックパワー→Varialのほうが16%高かった
・カットバックの回転角度→Varialのほうが8%大きかった
・カットバックロール角→PUのほうが5%大きかった
・ボトムターンロール角→Varialのほう14%大きかった
・ボトムターン持続時間→Varialのほうが4%大きかった
・ボトムターンで得られたスピード→両方とも等しい
・ボトムターン後の垂直度→PUの方がより垂直に近かった(1%)
・重量:バリアル4.85に対し、PU 5.07(約4.5%の差)

その他

他にも、アルメリックのフレックス・バー(Flex-bar)やハイドロフレックス(Hydro-flex)等様々な構造・素材があり、どれを選ぶかは、サーファー次第。まずは自分の好きなブランドでどのようなラインナップがあるか、調べてみるとよろしいかと思う。

まとめ

サーフボードの仕様をどうしようか迷われているサーファーにとっては、さらに悩ましくなる内容となってしまったかもしれない。

迷って決められないほど選択肢があるので、あらかじめサーフボードに求める最優先事項を決めてから探すとよろしいかと思う。色々と比較検討するのもサーフボード購入の楽しみの一つなので、この記事を参考にポジティブに悩んでいただき、最高の一本を手に入れられる一助となれば、幸いである。

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